日本には、国宝に指定されているお城が5つあり、国宝5城と呼ばれています。
実際に5つのお城を巡り歩き、比較してみました。あらためて観察すると、それぞれの時代背景と特徴があることを発見できます。訪れた際に、押さえておきたい見どころを紹介します。
国宝5城
江戸時代以前の天守が現存するのは12城。その中で、特に価値の高い5つの城が、国宝に指定されています。
天守が現存する12城は、こちらです。
国宝5城は、建築された年代が違うため、それぞれの時代背景が反映されています。
数百年前の建築物が、現代に受け継がれていることは、まさに奇跡。それぞれのお城について見どころを紹介します。
5城 | 姫路城 | 彦根城 | 松本城 | 犬山城 | 松江城 |
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異名 | 白鷺城 | 金亀城 | 烏城 | 白帝城 | 千鳥城 |
天守 | 連立式望楼型 | 複合式望楼型 | 連結式望楼型 | 望楼型 | 複合式望楼型 |
外観 | 5重6階地下1階 | 3重3階地下1階 | 5重6階 | 3重4階地下2階 | 4重5階地下1階 |
高さ | 31.49m | 15.5m | 30m | 18.79m | 22.4m |
築年 | 1,346年 | 1,622年 | 1,504年 | 1,537年 | 1,611年 |
所在地 | 兵庫県 | 滋賀県 | 長野県 | 愛知県 | 島根県 |
入場料 | 1000円 | 800円 | 700円 | 550円 | 680円 |
見所 | お菊井戸 | 馬屋 | 月見櫓 | 天守回廊 | 北惣門橋 |
姫路城
姫路城は、1993年に日本で最初に登録された世界遺産です。
別名、白鷺城。
屋根瓦と白壁のコントラストがさらに際立ち、威風堂々とそびえる姿が、白鷺が羽を広げたような美しさです。優雅で白い漆喰の壁が特徴で、とても大きな城郭と複雑な防御施設、そして城下町が保存されています。
5層の大天守と東・西・乾の小天守は、 渡櫓で結ばれた連立式天守閣。1609年に建築された大天守は、平成の大規模修理を経てよみがえりました。大天守を支える2本の柱が、東大柱と西大柱。その大きさと太さに圧倒されます。
最上階には、刑部神社が祀られ、窓から姫路市の360度パノラマが望めます。大天守の高さ31.49mは、当時の日本で最大の高層建築でした。
1,000本桜
こちらは、春にも訪れた姫路城。
白鷺城に映える、満開の1,000本桜は、圧巻のひとことです。
お菊井戸
怪談「播州皿屋敷」で有名な、お菊さんの井戸。お菊さんの亡霊が、毎夜「いちま~い、にま~い…」と数える悲痛な声が響きます。
好古園
こちらは、紅葉の季節に訪れた好古園。姫路市制100周年を記念して造営された日本庭園です。趣きの異なった九つの庭園群を、楽しむことができます。姫路城共通券(+50円)を購入すると、お得に入場できます。
姫路動物園
敷地内に、姫路動物園も営業しています。入園料は、大人210円、小人30円。小ぢんまりした動物園ですが、子供連れファミリーには嬉しいサービス価格です。
彦根城
彦根城は、天守が3階3重の屋根で構成されています。
別名、金亀城。
大津城が移築されたもので、美しい庭園を持ち、軍事面にも優れたお城です。また、天守だけでなく、櫓や門も重要文化財として残っています。天守からは、雄大な琵琶湖が望めます。
ひこにゃん
大人気ゆるキャラ「ひこにゃん」の住まいは彦根城。1日3回、ファンの前に出没します。
ひこにゃんのグー。ジャンケン大会で、観衆は大盛り上がりです。
馬屋
城内に残る馬屋は珍しく、ここ彦根城だけで観ることができます。こけら葺きの屋根が、美しく改修されました。
玄宮園
玄宮園は、大規模な池泉回遊式庭園。池と周囲を巡る園路を中心に作庭され、桂離宮や兼六園とともに全国的に有名です。手前の池と奥に見える鳳翔台(茶席)、そして遠くの天守が、バランスよく構図に収まります。
松本城
松本城は、北アルプスの山々を背景に建立された数少ない平城です。
別名、烏城。
五重天守の実物が見られるのは、国内で姫路城と松本城だけ。五重六階の天守閣は、日本最古のものです。
最上階望楼の天井に、二十六夜神が祀られています。天守から見渡せる緑の蓮池と、赤い埋橋のコトラストが鮮やかで、四季折々の風景にマッチします。
月見櫓
松本城は、平和な時代に建造されました。その象徴が、朱塗りの月見櫓(写真向かって左の櫓)に認められます。
月見をするための櫓で、北・東・南の戸を外すと三方が吹き抜けになります。防衛が重要な戦乱の世では、考えられない趣向です。
埋橋
埋橋は、松本城と松本城公園を結ぶ橋です。黒い松本城と赤い橋が、鮮烈で耽美な雰囲気を醸しだします。
松本城公園
公園は市民の憩いの場になっており、散策にもぴったり。蓮の花が一輪咲いていました。
犬山城
犬山城は、織田信長の叔父である織田信康によって築城されました。
別名、白帝城。
豊臣秀吉が入城し、徳川家康と睨み合いが続いた歴史が残っています。個人所有の城として、過去に成瀬家が所有していたことも特徴です。
最古の天守
天守は、現存する日本最古のもの。他の城との大きな違いは、天守の外回廊を歩けること。回廊を一周すると、木曽川と伊木山や犬山橋など、東西南北の風景を眺めることができます。柵の高さが腰より低いため、高所恐怖症の方には怖いかもしれません。
唐破風
唐破風は、丸みをつけた破風の一種。
正面から見える出窓のような場所は、内側から見るとこんな感じです。
犬山城下町
戦国時代から続く、木造建築が残る犬山城下町。当時の雰囲気を色濃く残しており、そぞろ歩きも楽しく多くの観光客でにぎわっています。
松江城
松江城は、山陰地方で唯一の現存天守になります。
別名、千鳥城。
外壁の多くが黒色の下見張りで、石落としや石打棚など、実戦を強く意識して築かれました。優雅な千鳥破風があり、宍道湖の眺めも美しい。
5階の天守は、壁のない360度の展望が広がる望楼。天守から、宍道湖が望めます。
北惣門橋
城につながる木橋の北惣門橋が、復元されています。優雅な遊覧船も楽しみのひとつ。堀川遊覧船は、大人1,500円です。
石打棚・塩蔵・井戸
戦を強く意識して築城された様子が、当時のまま残されています。石打棚で石を砕き、石落としに使われました。井戸を覗き込むと、吸い込まれるような高さでした。
興雲閣
興雲閣は、松江城二ノ丸に建つ明治建築です。皇室の宿泊所としても使用されました。郷土資料館として、無料で見学できます。併設する亀田山喫茶室で、休憩するのもよいでしょう。
ついでに見ておきたい、宍道湖のサンセット。島根県立美術館が夕陽鑑賞のスポットになっており、市民憩いの広場になっています。
あとがき
私は、播州生まれで、幼少期に姫路城や姫路動物園で遊んで育ちました。良くも悪くも、姫路城がお城の基準に刷り込まれています。
ゆえに、全国のお城を訪れて、鉄筋やエレベーターの近代施設を見ると残念な気持ちになります。
しかし、今回めぐった5つの城は、さすがに国宝。天守が丁重に保存され、行政も観光誘致に尽力し、携わる市民が愛情を注いでいる様子が窺えました。
お城は、世界でも類を見ない日本独特の建築美。日本人の大切な遺産ですね。