有限会社の代表に絶望する〜絶望その⑤

I can’t go on. I’ll go on.
(もう進めない。だが進むのだ。サミュエル・ベケット)

絶望の中にある「生の持続」を象徴する。無意味の中で、それでも「続ける」ことの美学。20世紀文学で最も有名な“諦めと希望の共存”の言葉。サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』

LIXIL ユニットバスの見積りに絶望する~絶望その④

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有限会社代表からの電話

有限会社の代表を名乗る男性から、電話がかかってきた。

死んでしまいそうな、しわがれた声だ。

有限会社の代表というだけで、高齢なことは想像できる。

2006年の会社法により、有限会社の新設は廃止された。有限会社は、最低資本金300万円、且つ簡単な手続きで設立できた。役員の任期がなく、長期的に安定した経営を続けられることから、現在でも多くの有限会社が存続している。

こちらの腹わたは、煮えくりかえっている。

怒りに任せて、現在までの経緯をぶちまけた。

すると、代表はこう答えた。

「自分は聴いたばかりで、あとは業者に任せています」

現場は大変なことになっているのに、業者に任せているだと?

一度でも自分で現場を見に行ったことが有るのか?

そう問い詰めると…

代表が伝家の宝刀を抜いた。

「今、入院中なんです」

「キーッ(私の心の声)」

あまりのショックで茫然自失する。

入院中患者への督促心得

貸金業法では、早朝や深夜の取り立て、罹災者や入院中患者への督促が禁止されている。

会社員時代、債権回収の現場に長くいた。貸金ではないので関係のない話だが、「入院」のキーワードで、一気に沸点が下がってしまった。

確かに死にそうな声ではある。

これが演技なら、助演男優賞が貰えるかもしれない。

しかしだ。

私は、階下の住人に見舞金と菓子折りを持参し、何度も進捗を報告した。

もちろん、菓子折りを持って謝罪に来いと言っているわけではない。

せめて進捗の連絡をするよう申し入れて電話を切った。

これは1ヶ月前の会話だが、その後一度も連絡は無い。

本当に死んだのだろうか?

管理会社から保険適用外の連絡

管理会社から、ユニットバスは保険適用外との連絡が入った。

ただ、悪徳業者の水漏れ調査費用と、階下の補修費用は補填するとのこと。

ユニットバスは、有限会社代表と交渉してほしいとのことだった。

仕方ない。

請求書を作ることにした。

有限会社代表へ請求書

UBなど原状回復費用=1,026,300円

1ヶ月ぶりに、有限会社代表の携帯に電話してみた。

すると、男性の元気そうな声が聴こえる…

何の連絡もなく、一体どうなっているのかと悪態をついてみた。

そして、請求書の宛先を聴いた。

すると…

「今、外にいるので、事務所聞いてほしい」とのこと。

「入院してたんと違うんかい(私の心の声)」

5分後に電話させるとのことだったが、4時間待っても電話が来ない。

こちらから事務所に電話し、宛先を確認した。

金曜の夜だった。

請求書を郵便局の夜間窓口から速達で発送。

郵便局の女性より、土曜には届くとのこと。

そして、月曜の朝。

有限会社代表の携帯に電話を入れた。

「速達で発送した請求書を見てもらえましたか?」

すると…

「土日は出掛けていたので見ていません」

世の中には、無責任で誠意のかけらも無い人間が存在する。

「11月末までに支払ってください」

(つづく)