
「老後資金2000万円問題」とは、金融庁が2019年に出した報告書に端を発している。その内容は、「夫65歳・妻60歳の無職世帯が年金だけで生活すると、30年間で約2000万円不足する」というもの。
この報告書で言及された「資産」とは、主に金融資産(現金、預貯金、株式、投信など)を指している。つまり、政府がいう「2000万円」とは、「すぐに使える or 換金可能な金融資産」のことだ。
不動産などの現金化に手間・時間がかかる資産(非流動資産)は、カウントされない。もちろん不動産も生計を構築する立派な資産である筈なのだが、政府の怠慢で計算するのが面倒なだけなのだろう。
さて、それでは実際に老後資金として2000万円以上を貯めている人は、どれくらいいるのだろうか?最新データを調査してみた。
貯蓄2000万円以上の割合
2023年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、貯蓄2000万円以上の割合は以下の通り。
・単身世帯:13.2%→ 約7.6人に1人が達成
・2人以上世帯:18.9%→ 約5.3世帯に1世帯が達成
続いて、高齢者の達成状況を見てみよう。
・60代の単身世帯:34.8%(平均:2240万円、中央値:1100万円)
・60代の2人以上世帯:38.0%(平均2588万円、中央値1200万円)
年代別に表にすると以下の通り。
年代 | 世帯形態 | 2000万円以上 | 平均 | 中央値 |
---|---|---|---|---|
全年代 | 単身 | 13.2% | ― | ― |
全年代 | 2人以上 | 18.9% | ― | ― |
60代 | 単身 | 34.8% | 2240万円 | 1100万円 |
60代 | 2人以上 | 38.0% | 2588万円 | 1200万円 |
70代 | 2人以上 | 27.1% | 1757万円 | 700万円 |
70代になると、実際に貯蓄を取り崩すため、貯蓄額も減少傾向になる。
それにしても、2000万円を貯めている人は、予想以上に多いことがわかる。
金融資産の構成比
1. 金融資産全体の構成比
日本の家計金融資産(全体約2,056兆円〜2,230兆円)に占める構成割合。
- 現金・預金:50%超
- 株式・投資信託:15〜20%
- 保険・年金(積立型含む):約30%
- その他(外貨・債券・金など):ごくわずか
2. 「2000万円」をこの構成比でイメージ
- 現金・預金:1,000万円超(50%)
- 保険・年金:600万円前後(30%)
- 株式・投資信託:300〜400万円(15〜20%)
- その他(外貨・債券・金など):〜数百万円(5%程度)
3. 資産タイプ別の特徴
- 現金・預金:安全性重視派が多50%超を維持。流動性重視の傾向。
- 保険・年金:日本人の家計では重要な老後資金の位置づけで30%程度。
- 株式・投資信託:全体では15〜20%。新NISA推進で徐々に増加傾向。
- その他:債券・外貨などは少数派で、ゴールドはその中でも限られた層。
資産構成 | 2000万円の内訳 |
---|---|
現金・預金 | 約1,000万円(50%) |
保険・年金系 | 約600万円(30%) |
株式・投資信託 | 約300~400万円(15~20%) |
その他(外貨・債券・金) | 約100万円(5%前後) |
あとがき
老後資金2000万円を構築する為には、若いうちからの資産形成・節約・投資計画が重要である。
すでに中高年の場合は、生活支出を早々に見直す必要がある。生活費で残ったお金を貯蓄にまわすのではなく、毎月の貯蓄金額を決めてから、残ったお金で生活しなくてはならない。
政府は所得を増やす計画を打ち出しているが、裏を返せば税金を増やす計画でもある。累進課税を採用する日本では、所得が増えても生活が豊かにならないのは周知の事実である。