「みんなで大家さん」提訴へ…いや、そりゃそうだろ。

不動産詐欺

「みんなで大家さん」が騒がれている。

分配金もなく集団提訴へ発展。

大家さんの多くは、かねてからこのスキームに警鐘を鳴らしていた。

大家さんはらくちんだが、決してらくして大家さんになれるわけではない。

楽して金儲けができはずもない。

詐欺を肯定するつもりは毛頭ない。

しかし、リスクマネージメントもせずに、簡単に騙される消費者にも問題があると感じるのは自分だけだろうか。

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想定利回り7%

「みんなで大家さん」は、複数の共同出資者が不動産を運営。想定利回り7%の高配当をうたい、およそ3万7000人から2000億円以上を集めたとされる。主力プロジェクト「ゲートウェイ成田」の建設予定地は更地の状態。分配金が支払われないばかりか、解約にも応じず、元本も戻ってこない可能性がある。

「悪質な投資勧誘」や「情報開示の不備」などが問題視されているが、そもそもツッコミどろが満載だ。想定利回り7%のような、元本保証の商品があるはずもない。(出資法により元本保証は禁じられているが、不動産の評価額が下落した場合でも20%以内であれば出資元本に影響がないとうたっている)

田舎のボロ戸建ならともかく、都市圏の新築物件で7%は望めない。ましてや「ゲートウェイ成田」のような空港開発用地ならなおさらだ。「借地」という情報開示に不手際があったことは問題である。しかし、関空やセントレアの商業施設が、黒字化を果たすのに何十年も要したことを考えると、分配金を貰えると思う根拠があまりにも乏しい。

共同馬主ならぬ共同大家

一口100万円。出資金の上限はなかったようだ。まるで共同馬主みたいだ。

40年働いた貯蓄と老後の保険を解約して9000万円を出資した60代の元会社員。「夜も眠れず、食事も喉を通らない」という。気の毒だとは思うのだが…

大家さんが所有する物件のすべてが儲かるわけではない。想定外のトラブルは付きもので、元本割れする物件は珍しくもない。投資をするなら、リスクの許容範囲内に収めておきたい。

ちなみに自分は、10頭の共同馬主だったことがある。まったく儲からなかったが、夢が見れただけマシかもしれない。

不動産詐欺の代表例

最後に、不動産詐欺の代表例を挙げておく。「みんなの大家さん」のような同様の手口は、過去にも多く報告されている。

1. ポンジスキーム型(新規出資で既存出資者へ分配金)

  • SNSやネット広告で初期に分配があるように装い、後に突然連絡が取れなくなるという典型的なポンジ・スキームも存在する。
  • また、架空物件や存在しない案件を用いて「高利回り」をうたい、投資金を詐取する手口も多く見られる。

2. 手付金詐欺・地面師によるケース

  • 手付金詐欺:手付金を支払わせた後に売主や業者が行方をくらます。実際に物件は存在せず、手付金だけが消えるという被害が報告されている。
  • 地面師詐欺(積水ハウス地面師事件など):偽造書類やなりすましにより、所有者や仲介業者を装って手付金を奪う精巧な手法が存在する。

3. サブリース詐欺(賃料保証をうたうも未払い)

  • 「ずっと保証する」とうたわれた高利回りのサブリース契約も、実際には短期間の保証にすぎず、更新時に賃料の大幅値下げが行われる。
  • かぼちゃの馬車事件」では、サブリース保証と高利回りを全面に出して不動産投資を促進した結果、家賃未払いと会社破綻を招き、多くの投資家がローン負担に苦しんだ。

4. 架空物件・満室偽装・海外不動産詐欺

  • 満室偽装:実際には空室状態なのに、満室という偽りのデータを提示して販売する詐欺も確認されている。
  • 海外不動産詐欺:現地を確認できないことを悪用し、架空の海外物件や不当に高額な案件を売りつけるケースも増加中。

5. 豊田商事事件

  • 1970〜80年代にかけて、「豊田商事事件」という大規模詐欺事件が発生。
    同社は「純金ファミリー契約証券」を用いて、高齢者などに投資させて資金を横流。後に破綻し、多くの被害者が出た。企業名が「豊田」であったことで、信頼を錯覚させたことも問題であった。今回の「成田ゲートウェイ」にしても、「成田」の名前で安心した消費者が多かったのではないだろうか。