「生き残ったもの」だけを参考にして結論づけること。
これを、生存バイアス(Survivorship Bias)と呼びます。
バイアス(Bias)とは偏ること。
生存バイアスは、意思決定や分析において「生き残ったもの」だけを対象に考えることで、誤った結論や偏った視点に至ることを指します。これは、失敗や消滅したものが分析対象から除外されるため、全体像を正しく理解できないことが原因です。
言い換えれば、失敗の経験こそが、成功につながる道とも言えるでしょう。
この記事では、生存バイアスの例と、失敗を経て成功した例を紹介します。
成功バイアス
成功バイアスの典型的な例
1. 第二次世界大戦中の飛行機の修復
アメリカ軍が被弾して帰還した爆撃機を調査し、弾痕の多い部分を補強しようとしました。しかし、統計学者エイブラハム・ウォルドは「帰還できなかった飛行機のデータが欠けている」と指摘し、むしろ弾痕の少ない部分(エンジンやコクピットなど)を補強すべきだと結論づけました。
2. 成功した企業の分析
ビジネスの成功例だけを分析すると「成功に必要な要因」が見つかるように見えますが、実際には失敗した企業の要因も考慮しなければ正しい結論は得られません。
3. 学校の卒業生インタビュー
名門大学の卒業生が成功している例を見て、その大学が素晴らしいと判断するのは生存バイアスです。成功しなかった卒業生や中退者の情報が欠けているため、全体像が見えていません。
成功バイアスを避ける対策
問題点は、データの一部しか見ていないため、偏った結論に至る可能性が高まることです。リスクや欠陥を過小評価し、過度に楽観的な判断を下してしまうことにあります。
1. 欠けているデータを意識する
分析対象に含まれていない失敗例や不成功例を探す努力をする。
2. データの背景を理解する
どのようにデータが収集され、どの部分が欠落しているかを確認する。
3. 反対例や異なる視点を考慮する
成功例だけでなく失敗例にも目を向け、生存バイアスを意識することで、偏らない判断や分析が可能になります。
失敗を成功に変えた例
イーロン・マスクのスペースX
失敗の内容: スペースXは初期のロケット打ち上げで3度連続失敗しました。このままでは資金が尽き、会社は倒産寸前の状況でした。
学びと成功: 失敗のたびにデータを分析し、設計や運用の改善を続けた結果、4回目の打ち上げで成功。その後、再利用可能なロケット技術を確立し、商業宇宙開発のリーダーに躍り出ました。
教訓: 綿密なデータ分析と改善を怠らないことで、失敗を新たな挑戦の足がかりにできます。
トーマス・エジソンの電球
失敗の内容: エジソンは電球のフィラメント素材を見つけるために、6,000回以上の試行錯誤を繰り返しました。
学びと成功: エジソンは失敗を「使えない素材を確認した過程」と捉えました。この継続的な実験によって、最終的に竹の炭化物を使用した耐久性のあるフィラメントを発見し、実用的な電球を開発しました。
教訓: 失敗は成功へのプロセスの一部であり、何がうまくいかないかを知ることが成功につながります。
任天堂のバーチャルボーイ
失敗の内容: 1995年に発売された「バーチャルボーイ」は、3Dゲーム機として革新的でしたが、使いづらいデザインや目の負担から商業的に大失敗しました。
学びと成功: 任天堂はバーチャルボーイの失敗を教訓に、ユーザー体験や製品設計を徹底的に見直しました。この経験が後の大ヒット商品「ニンテンドーDS」や「Wii」の開発に活かされました。
教訓: 消費者のニーズに真摯に向き合い、失敗を次世代製品に反映する姿勢が重要。
ダイソンのサイクロン式掃除機
失敗の内容: ジェームズ・ダイソンは、サイクロン技術を取り入れた掃除機を開発する過程で、5,000回以上の試作品を作成しましたが、その多くが失敗作でした。
学びと成功: 失敗のたびにデザインを改善し、従来の掃除機にはない革新性を持つ製品を完成させました。その結果、ダイソン社は掃除機市場のリーダーになりました。
教訓: 粘り強く試行錯誤を繰り返すことで、他社にない革新性を生み出せます。
マクドナルドのマックピザ
失敗の内容: 1980年代、マクドナルドは「マックピザ」を導入しましたが、調理時間が長すぎて顧客に受け入れられず失敗しました。
学びと成功: その後、顧客が求める「スピード」を重視し、メニュー開発を改善。現在の「朝マック」や「デリバリー」などのヒット企画に繋がりました。
教訓: 顧客のニーズを深く理解し、事業戦略に反映することの重要性。
共通する教訓
失敗を成功に変えるためには、共通の教訓が見て取れます。
1. 失敗を分析する
なぜ失敗したのか、原因を徹底的に探る。
2. 柔軟に戦略を変える
固執せず、得られた教訓を元に改善を続ける。
3. 失敗を恐れない文化を育てる
挑戦と学びの重要性を組織や個人で共有する。
失敗は痛みを伴いますが、それを学びの機会として活かせば、長期的に見て大きな成功を掴むことができます。
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