40代・50代の会社員が迎える「たそがれ研修」
ワーク・ライフ・バランス研修ともいう。
人事部が、役職定年前の職員を集めて研修をする。
役職定年後の処遇。
減給、そして将来の退職金。
セカンドキャリアに備えるためだ。
研修会場の空気は、悲哀に満ちあふれる。
近年は、公務員にも役職定年が導入されているらしい。
ある銀行の「たそがれ研修」の現場は、こんな感じだ。
たそがれ研修の目的
40代の行員男性が集められた研修会場。
人事担当者から、課題を受けてペーパーに落とす。
人生の棚卸し。
・これまでに得た特筆すべき経験
・これまでに取得した資格やスキル
・自分が他人より秀でている能力
・プライベートでの特技
・仕事以外の人脈
・これから組織に還元できること
役職定年で、部下がいなくなる。
それでも、組織に還元できることは何かと問われる。
朝も夜も、ときには休日も返上して会社のために尽くしてきた。
しかし、役職定年を迎えた途端に、それらの自負は色褪せる。
結局、仕事以外に特筆できる能力や人脈も無い。
自分には、何も残っていないことに気付く。
何も無いことを気付かせることこそが、「たそがれ研修」の目的だ。
たそがれ研修の目的は、自分に何も無いことを気付かせること。
たそがれ研修の覚悟
さらに、追い打ちをかけるように研修は続く。
・ラインから外れたあとの肩書き
・将来の減給
・将来の退職金
・熟年離婚で妻に捨てられない方法
・転職後に役立つ資格取得の奨励
役職定年を迎える中高年は、相当の覚悟が必要だ。
部下がいなくなり、年下の上司に仕えることになるだろう。
減給になっても、モチベーションを下げてはならない。
しかし、内心穏やかではいられないはずだ。
そして、働かないオジサンが量産されていく。
悲しいが、これが会社員のリアルな現実だ。
再雇用か?
転職か?
起業か?
研修が、次の人生を考える良い機会であると、ポジティブにとらえたい。
たそがれ研修の覚悟とは、次の人生を見つめ直すこと。
あとがき
私は、48歳で研修を受けた。
実際の役職定年は、52歳。
どう頑張っても、将来の昇格は断念せざるを得ない。
幸い、役職定年まで4年間もあった。
そこで、研修翌月に、税務署に開業届を提出した。
不動産賃貸業の副業を始めた動機である。
52歳で辞めるつもりが、理由あって54歳まで勤めることになったが、今となっては「たそがれ研修」に感謝するしかない。
サイドFIREにこぎつけたのは、
あのとき、はっきりと、
自分の将来を示してくれた研修のおかげだ。