今日は7月7日。
ちょうど1年前、私は七夕の日に、退職願いを提出しました。
年収1000万円の給与水準は、早期退職するかどうか悩む微妙な金額だと思います。
経験を振り返ることで、同じ境遇で悩む会社員の方に参考になれば幸いです。
年収1000万円の早期退職
退職は踏み止まろう!
心身ともに安定した暮らしが約束されているのであれば、退職後に必ず後悔します。
もう後戻りはできません。
退職後に何をするか決まっていないのであれば、なおさらのこと。
ただし、転職活動は自由。
現在の自身の価値を見極めたうえで、退職を検討しても遅くありません。
現在勤める会社も、以前は貴方が入社を希望した会社であった事を思い出しましょう。
退職してもよい条件
退職してもよいのは、次の条件に当てはまる場合だと考えます。
①副業で生活基盤を確保している
副業やサイドビジネスで、生活できる金銭的基盤を確保している。
会社を辞めても、生活を維持できる環境が整っていることです。
②転職先が決まってる
すでに、転職先が決まっている。
やる気に満ち溢れ、前向きにステップアップを目指している状態です。
③プライドを捨てることができる
転職で減給になり、肩書きが無くても、プライドを捨てて新しいことにチャレンジできる。意外にやっかいなプライドを、本当に捨てる勇気があることです。
転職先が決まっていない方は、中高年の厳しい転職事情を知っておいてください。
④職場が憂鬱で病気になりそうだ
職場のことを考えると、苦痛と不安で憂鬱な気分になる。そんな会社は、病気になる前にさっさと見限りましょう。
年収1000万円の所得分布
厚生労働省が発表している所得分布です。
私が勤めた金融業界では、30代で年収1000万円を超える社員が多く在籍します。
年齢を重ね、順調に管理職になれば、さらに年収も増えていきます。
しかし、役職定年で減額になり、最終的に1000万円を維持するのは難しくなるのが現実。
同じ境遇の会社員は、先行き不透明な待遇に、焦りや不安な思いに襲われていることでしょう。
組織の中で落ち武者のように感じ、自己肯定感の希薄になった自分。
それでも、世帯全体でみると充分に恵まれていることに、思いを寄せてみましょう。
年収1000万円のリアルな生活
年収1000万円という言葉が、ひとり歩きしているように思います。
会社員の目指す、ひとつのステータス。
世間一般から見ると、さぞかし裕福な暮らしをしているかのように見られがちです。
金融業界にも、勝ち組にでもなったかのように錯覚している人間がいます。
高級時計や輸入車を購入。年に何度も海外旅行。子供の英才教育。連日連夜の接待やゴルフで湯水のごとく散財します。
身の丈に合わない生活を続けた結果、住宅ローンや子育てを終える頃には、老後の預貯金が残っていないのが現実です。
「年収1000万円=お金持ち」という幻想に薄々気付き始めるのは、定年退職間近になってから。
もちろん、堅実に貯蓄に励む人がいることも付け加えておきます。
年収の多いことが美徳ではない
もっと早く気付けばよかったと思うことです。
住民税が減額される世帯。子供の給食費を免除される親。同居家族の扶養に入っている人。これらは、節税対策をしている堅実な人達である可能性が高いこと。
また、年収1000万円の会社員より、年収84万円の法人経営者の方が、裕福な暮らしをしている可能性が極めて高いこと。
私は、この事実に気付くのに50年かかりました。両親や学校の先生は、マネーリテラシーについて、何も教えてくれませんでした。
会社員の傍ら副業で不動産投資を初め、税金の仕組みを勉強するに従い、ようやく気付いた事実です。
労働者は搾取されている
マルクスは「資本論」で語っています。
労働者は労働力という商品を提供し、資本家は労働者が生きていけるだけの賃金を支払う。これを「労働力の再生産のコスト」と呼びます。
再生産とは、労働者が翌日も元気に職場に来て、仕事ができるような状態にすること。
資本家は、食費や住居費を賄うことが出来る賃金を支払う必要がありますが、商品を売って得た代金のうち一部だけを賃金として支払い、残りの利益は自分の懐に入れてしまいます。
労働者が生んだ価値の一部だけを支払い、残りの価値(剰余価値)は支払いません。
マルクスは、これを実質的な不払い労働であり、不当な搾取であるといっています。
現代に置き換えれば、会社員は会社(もっと言えば国)に搾取されているといえます。暮らしていける最低限の賃金を与えられ、無尽蔵に税金をむしり取られている状態です。
ヒトラーの源泉徴収制度
国民を相手に源泉徴収制度を導入したのは、ヒトラーによるナチス・ドイツ。戦費調達のために、大衆から税金を徴収したのが始まりです。
日本では、1940年に給与からの源泉徴収が始まり、1941年に「定額郵便貯金」が創設推奨され、それぞれ戦費調達に利用されました。アメリカ合衆国では、第二次世界大戦中の1943年に導入されています。
国税庁の累進課税表です。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円〜 | 45% | 4,796,000円 |
年収1000万円の場合。控除後の所得695万円を超える金額に対し、所得税率23%と住民税率10%を加えた合計33%が課税徴収されます。
年収1100万円の場合。所得900万円を超える金額に対し、所得税率33%と住民税率10%を加えた合計43%の税金が徴収されます。
累進課税のもとでは、年収1000万円から給料が増えてもお金持ちになれないことが理解できます。
国民の3大義務
・第26条 子に教育を受けさせる義務
・第27条 勤労の義務
・第30条 納税の義務
日本の学校教育では、国民の三大義務「教育の義務」「勤労の義務」「納税の義務」を教わります。
良い大学に進学し、大きな会社へ就職し、たくさん給料をもらうことが、あたかも美徳であるかのように誘導されます。
一方で、税金の仕組みや節税方法については、一切教えてくれませんでした。
節税対策を知っている者だけ(知ろうとする者だけ)が、その恩恵を受けることができます。
退職前にマネーリテラシーを養う
マネーリテラシー(お金の知識)は、お金持ちの親から子供へと引き継がれます。
お金に無頓着な家庭から、お金持ちの子供が誕生することは稀です。
一般家庭に生まれたなら、お金に興味を持ち、お金の勉強をする以外にありません。
年収1000万円の貴方が、マネーリテラシーに興味がないなら、早期退職はおすすめしません。
無職で収入がゼロになっとしても、日本で暮らしていく限り、税金と社会保険は必ず納めなくてはいけませんからね。
資本家への道標
20年前、ロバート・キヨサキ氏著「金持ち父さん貧乏父さん」を読んだ際、内容ががよく理解できませんでした。従業者から脱出したことで、自営業者→ビジネスオーナー→投資家への道標が理解できるようになりました。
タルムードの教え
世界の大富豪に、ユダヤ人が多いことは有名です。マーク・ザッカーバーグや、マイケル・ブルームバーグなど数知れません。ユダヤ人の間では、モーゼの「タルムード」が脈々と受け継がれているといいます。
早期退職のメリットとデメリット
私は、金融機関に32年勤めながら、不動産投資で生活基盤を確立し、早期退職しました。主観となりますが、私が感じるメリットとデメリットを添えておきます。
早期退職のメリット
①毎日が日曜日
毎日が日曜日です。また、些細なことで幸せを感じます。
- 毎日、電車に乗らなくて良い
- 雨の日に外に出なくて良い
- どれだけ夜更かししても良い
- 毎日のスケジュールを気分で決めることができる
- 好きな時間に、好きな場所へ行くことができる
②ストレスが無くなった
会社の煩わしい人間関係から解放され、好きな人とだけ過ごすことができます。
- 日曜日の夕方、サザエさんを見ても胃が痛くならない
- 毎夜の宴会に誘われなくて済む(断る苦痛から解放される)
- スピーチをしなくてよい
- 上司や部下の顔色を窺わなくてよい
- 会議の準備や資料作成をしなくて済む
- 望まない研修に参加しなくて済む
- 定時に退社することに後ろめたさを感じずに済む
- 人事異動で環境が変化せずに済む(2度の転宅と単身赴任を経験)
- 昇給・昇格の季節に一喜一憂せずに済む
③無くなった習慣
- 出社直前の珈琲タイム(カフェで20分瞑想。実はただ眠っているだけ)
- 月に一度、散髪する
- 日曜日の夜に爪を切る
- 季節の変わり目に洋服を購入
- 靴磨きをする
- 香水、整髪料のまとめ買い
- 土日にゴルフの練習をする
- 発声練習する(演劇部員時代の発声練習をこっそり実践する)
早期退職のデメリット
①定期健康診断が無い
在職中は、医療費の負担が無く、安心して健康を維持できました。毎年「人間ドック」を無料で受診できましたし、インフルエンザの予防接種も無料でした。
退職後は、行政主催の集団検診などに、応募する必要があります。「協会けんぽ」の特定健診内容は、以下の通りです。
- 問診
- 身体検査
- 血圧検査
- 尿検査
- 血液検査(脂質、肝機能、代謝)
指定会場で受診すれば無料ですが、「人間ドック」の検査項目に比べるとかなり見劣りします。
心電図、胃カメラ、エコー検査、X線検査、大腸検査など、心配な部位があれば別途受診する必要があります。
②ボーナスが無い
ボーナスに関するニュースが流れてくる季節は、少し寂しいものです。
今年のボーナスで何を買おうか?
どこに旅行しようか?
そんな楽しみ方は、できなくなりました。
③年金が目減りする
退職後は、厚生年金を掛けませんので、年金が目減りします。
日本年金機構から届いた「ねんきん定期便」によると、会社員時代に比べ、年金受取見込額が年間30万円以上減額となりました。
将来への備えは、事業や投資で補填するしかありません。
あとがき
高収入の会社員に対する増税が顕著です。増税に反対したところで、高収入の相対的人口が少なく、政府にとって脅威にもなりません。
事業主が税金をコントロールできることに対し、会社員は100%無防備。
年収1000万円の生活が、思ったより豊かでないことや、美徳でもないことは紹介した通りです。
とはいえ、年収1000万円の会社員が、早期退職する理由は多くないと思います。
マネーリテラシーを高め、転職エージェントに登録し、自身の価値を見極めてから行動しても遅くはないでしょう。
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