不動産投資を考えている会社員は、多いと思います。不動産融資をどこで受けたらよいのか、疑問に思う人もいるでしょう。
私は、副業の不動産投資で独立しました。この記事は、実際にノンバンクで融資を受けた体験談をまとめたものです。
ノンバンクが、不動産投資に有効かどうか?銀行、信用金庫、政府系金融機関と比較しながら解説します。
・不動産投資を検討している人
・融資の選択肢を知りたい人
・ノンバンクの長短を知りたい人
不動産投資でノンバンクを利用するか?
最初の収益不動産を購入した際に、三井住友トラスト・ローン&ファイナンスで融資を受けました。
不動産投資でノンバンクを利用するべきかどうか?私の結論は以下の通りです。
不動産投資の資金調達
最初の収益不動産を購入する際、資金調達の選択肢は2択。現金で購入するか、金融機関で融資を受けるかです。
融資を受けることができる金融機関の選択肢は、以下の通り。なお、身内から資金調達する場合や、地主が土地に建物を建築する場合を除きます。
都市銀行
都市銀行は、普通銀行として東京や大阪など大都市に本店を構え、広域展開する銀行。
個人の投資初心者が、都市銀行で融資を受けることは100%無理です。都市銀行は法人営業に注力しており、個人サービスはリモート化が進みます。3大メガバンク(MUFG、SMFG、みずほ)で融資を受けることは、不可能です。
地方銀行
地方銀行は、一般社団法人全国地方銀行協会の会員である銀行。
スルガ銀行の不正融資問題以降、個人の投資家には門戸が閉じた印象です。金融庁の規制が厳しくなり、実績ある投資家でも、物件価額80%の追加融資しか受けられないと聞きます。投資初心者には、かなりの好条件が揃わないと新規融資は難しいでしょう。
信用金庫
信用金庫は、特定地域で居住・就労する人々による協同組織。
利用者・会員同士の互助で、地域密着サービスを行い、地域貢献することを重視しています。融資の対象は、信用金庫の営業エリアに居住・就労する人々。従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者と定められています。
こちらも地銀同様、個人の投資初心者には門戸が狭くなった印象です。しかし、担保価値次第で、投資初心者でも融資の可能性が残ります。
信用組合
信用組合も、特定の地域で居住・就労する人々による組織。
中小零細企業向きに、信用金庫より更に規模が小さく、組合員の互助を重視した金融機関です。融資の対象は、組合の指定する地域に居住・就労する人々。従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者と定められています。
・卸売業 100人または1億円小売業
・50人または5千万円サービス業
・100人または5千万円
指定地域に住み、指定地域の物件であれば融資の対象になります。但し、投資初心者の融資条件が厳しくなる点は上記同様です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、財務省所管の特殊会社。日本に5つある政策金融機関の1つです。国内金融業務は、以下の事業に分かれています。
・国民生活事業 – 国民一般の資金調達支援
・中小企業事業 – 中小企業の資金調達支援、信用保証制度
・農林水産事業 – 農林水産事業者の資金調達支援
不動産事業が事業的規模(5棟10室)に達していなくとも、不動産事業を経営していると見做されることが重要です。
審査基準は、各支店により微妙な違いがあるようです。融資を希望される方は、事業計画書を作成して訪問してみるとよいでしょう。
私は、日本政策金融公庫で根抵当権(※1)による極度額を設けて、有効活用しています。
(※1)根抵当権は、不動産を担保に、貸出上限額(極度額)を設定。極度額内で繰り返し借入れや返済を行うことができ、使い勝手のよい仕組みです。
ノンバンク
ノンバンクは、銀行・信金・信組・農協・労金などの金融機関以外で、貸金業務を営む金融会社。
預貯金の預け入れや為替の機能を持ちません。貸し出し(与信)を行い、貸金業法に基づく登録制で開業できる金融会社です。
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスも、ノンバンクのひとつです。
①ノンバンクの種類
・クレジットカード会社
・信販会社
・消費者金融
・住宅金融専門会社
・事業金融会社
・リース会社
②ノンバンクの特色
・顧客向け融資にあたり、貸付原資の資金調達を銀行等からの借入金や債券等の証券発行によって賄っており、銀行に比べて資金調達コストが高くなります。よって、貸出金利は銀行に比べて高くなる傾向にあります。
・ノンバンクが提供するカードローンやキャッシングも、銀行の提供する商品より高金利になります。一方で、融資審査のスピードが早い、営業時間が長いなど、利便性が高い点も特色。消費者金融では、ATMを設置して土日祝日も営業している場合が多い。
・個人向けノンバンクは、貸金業法「総量規制」の対象。借り過ぎや貸し過ぎを防ぐため、本人に安定した収入がなければ利用できません。借入れ限度額も、銀行に比べて少なくなる傾向にあります。
ノンバンクのメリット
審査スピード
融資の申し込みから、仮審査の結果がとても早いこと。
HPでは、仮審査結果まで2~10営業日とありますが、実質3日ほどの感覚です。信用金庫では、不動産謄本の確認から現地調査まで3週間程度は必要。
本人の属性、信用情報機関チェック、物件路線価格の調査程度ではないでしょうか。
会社員に不動産投資のチャンス
銀行や信用金庫は、事業の健全性や財務内容の調査に重点を置きます。ノンバンクは、販売商品として不動産担保融資を位置付けている印象です。
属性に問題がなく、不動産に担保価値があれば、初心者にも窓口が開いています。
融資期間の長さ
融資期間を長く設定できます。
HPでは、融資期間1~35年以内となっています。銀行や信用金庫は、法定耐用年数(鉄筋47年、木造22年など)以内、超過する物件は最長10年が融資期間の目安です。
ノンバンクでは、耐用年数に関係なく、ローン返済に支障のないキャッシュフローが捻出できれば、融資期間に上限が無いようです。
私も最初に、耐用年数を大幅に超える25年返済の融資を受けました。
ノンバンクのデメリット
抵当権設定
不動産に第一順位の抵当権(※2)が必須です。私の場合は、さらに自己名義の自宅も共同担保(※3)に入れる必要がありました。
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスで、4本の融資を受けましたが、何れも自宅を抵当権設定しました。銀行や信用金庫では、自宅を抵当に入れるケースは稀だと思います。
(※2)抵当権は、債権保全のため、債務者が所有する不動産に設定する担保権のこと。 債権が弁済されない場合に、債権者は抵当権に基づき担保不動産を競売に付し、競売代金を自己債権の弁済に充てることができる。
(※3)共同担保は、債権(借金)の担保として、複数の土地建物に対して抵当権を設定すること。
質権設定
抵当建物の火災保険金請求権等に、質権(※4)が必須です。
火災保険金を請求できる権利も抵当に入れないといけません。銀行や信用金庫で、質権設定は稀だと思います。
(※4)質権は、債権保全のため、債権者が債務者から物を受け取って占有し、債務が弁済されないときに売却し、売却価額から債権の弁済に充てることができる。
高金利
ノンバンク最大のデメリットは、金利が高いこと。
三井住友トラスト・ローン&ファイナンスの変動金利は、実質年率2.99%~6.40%。 [短期プライムレート年率1.475%+1.515%~4.925%(2024年9月現在)]
銀行や信用金庫の金利に比べて、2倍から5倍の高金利です。何十年という長期ローンになれば、元本金額より金利が上回ることになります。
さらに、デッドクロス(借入金の元本返済額が減価償却費を上回る状態)の時期が到来すると、キャッシュフローも大きく悪化します。
最低融資金額
ノンバンクでは、最低融資金額が設定されています。
概ね1,000万円以上の融資案件でないと取り扱って貰えません。要するに、少額の融資には応じないというわけです。
私は、築古戸建てが多く、1戸が1,000万円に満たないため、2戸纏めて合計1,000万円の融資を受けたことがあります。融資4本のうち1本は、物件2戸を纏めた複雑な担保設定をしました。
面談
金銭消費貸借契約とは別に、融資の前に面談があります。
なぜ不動産投資をするのか、動機や将来の展望・事業計画を聴取されます。政令都市にしか本支店がないことも多く、地方在住者にとって往訪が負担になることもあるでしょう。
連帯保証人
公正証書の法的手間を省くため、連帯保証人を原則不要とする金融機関が増えました。
私の場合は、妻が連帯保証人となり、妻も同席して面談を受けました。
融資手数料
融資を実行する際に、元金2~3%の事務手数料が発生します。
銀行や信用金庫の融資実行に、事務手数料は不要です(証貸の収入印紙は必要です)
解約違約金
繰上げ返済する際に、残金2~3%の解約違約金が発生します。
私の場合は、4本の融資を全額繰上完済したため、かなり高額の違約金を支払いました。
まとめ
銀行や信用金庫と比較して、ノンバンクで融資を受けるメリットとデメリットを紹介しました。結論は以下の通り。
投資初心者は、ノンバンク以外に選択肢が無い。最大のメリットはスピード。最大のデメリットは高金利。
これから不動産投資を始める人は、まず小規模不動産を現金で購入し、 銀行から低金利で融資を受けられるまで、不動産経営の実績を積み上げるのが得策だと思います。
最後に「もう一度ノンバンクで融資を受けるか?」と質問されれば…
答えは、Noです。