オーストラリアのウルル(エアーズロック)は、永久に登山禁止となりました。
滑落死亡事故30件以上、天候条件による入山確率33%。
危険な急斜面の1枚岩を登るウルル登山。もう二度と叶わない、登っておいて良かった世界遺産です。
ウルル山頂からの景色を紹介します。
ウルルの概要
砂岩層の一枚岩
シドニーからウルルまで、広大な赤土砂漠を横断。ウルルは、大陸の中心に位置し、地球のへそと呼ばれます。
高さは、東京タワー(333m)やエッフェル塔(324m)に匹敵します。
4億年前の地殻変動で、地層が褶曲して地上に表れ、7,000年前に現在の姿になりました。
地上に見える岩は、一枚岩全体の5%だけ。地表からほぼ垂直に、無数の縦縞を形成しています。
ちなみに、世界最大の一枚岩は、オーストラリアのマウント・オーガスタ(ウルルの2.5倍)です。
先住民アボリジニ
オーストラリア先住民が住み着いたのは、5万年以上前。精霊や水場の位置が描かれた壁画が残され、先住民の聖地とされます。
アボリジニ土地権利法
1976年 アボリジニ土地権利法制定。ウルルは対象除外。
1983年 オーストラリア政府は、ウルル所有権を伝統的所有者に返却を宣言。
1985年 所有権を先住民に返却。
2084年まで、一帯の土地をオーストラリアにリースされることになりました。無許可で立ち入った場合は、罰金が科せられます。
世界複合遺産
国立公園内に、2つの山があります。
ウルル(エアーズ・ロック)とカタ・ジュタ(マウント・オルガ)。
元は巨大なひとつの岩山、雨風に浸食されて現在の姿になりました。
世界複合遺産は「マチュピチュの歴史保護区(ペルー)」「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群(トルコ)」「メテオラ(ギリシャ)」など39件が登録されています。複合遺産は、世界遺産全体の3%しかありません。
ウルル登山
登山の概要
山頂まで片道1時間の登山。最大斜度46度の鎖場をのぼります。過去、滑落による死亡事故30件以上、日本人観光客も含まれます。
入山は気象条件に左右され、晴天でも風が吹く場合は禁止。入山できる確率は3分の1。宗教的理由から、撮影禁止や立入禁止区域が多く存在します。
登山禁止の天候条件
- 気温:最高気温36度以上に予想された場合、朝8時に閉鎖。
- 風:2500フィート(25ノット)以上の風が吹くと予報された場合。
- 低気圧:ウルルから50キロ以内の北西または南西に強い低気圧が観測された場合。
- 雨:今後3時間以内に20%以上の確率で降雨が予報された場合。
- 雷:今後3時間以内に5%以上の確率で雷雲の発生が予報された場合。
- 曇天:ウルルの山頂より低く雲が出ている場合。
- 日没:日の出の1時間半以上前および日の入り後1時間半後。
登山口の看板。日本語で「登らないこと、これがあるべき姿です」とあります。
ウルル登頂
さいわい天候条件に恵まれました。ツーリストを乗せたキャラバンが集まってきます。
一般人の立ち入り禁止区域。
最大斜度46度の鎖場を登り始めます。
私はトレッキングシューズの準備を怠り、薄いスニーカーで登山。岩の表面が想像以上に滑り、怖い思いをしました。
左右の視界から、地表が見下ろせるほど切り立った渓谷が迫ります。高所恐怖症の私は、足がすくみます。
右を見ても崖、左を見ても崖。下をのぞくと滑落しそうです。
尾根の道標に沿って歩きます。
平坦な場所も油断できません。
ウルル山頂に到着。羅針盤が設置されています。ここは「地球のへそ」です。
爽快!地球の原風景。360度、見渡す限り赤土の砂漠が広がります。
さて、下りも慎重に歩きます。
往復2時間の登山。無事に下山できて良かった。旅の目的を達成した満足感でいっぱいです。
ウルル登山の永久禁止
そもそも先住民の間で、祭司以外はウルル登山が認められていません。オーストラリア政府のウルル観光開発も、快く思っていませんでした。
リース料と国立公園入場料の一部を受け取っていたため、観光収入が貴重な収入源である先住民にとって、容認せざるを得なかった事情があります。
先住民に所有権が返却された現在、登山禁止は当然の結果というわけです。観光客には残念ですが、仕方ないですね。
ウルル観光の楽しみ方
7色変化のウルル
7色に変化する夕陽鑑賞・朝日鑑賞が最大の楽しみ。季節や天候により、刻々と色を変える一枚岩は神秘的。特に、夕陽で赤く染まるウルルは感動的です。
サンセット。世界中のツーリストが一同に集まり、立食パーティが催されます。
見渡す限りの砂漠のなか、ウルルの存在感が際立ちます。
夕陽鑑賞。
こちらは、翌日の朝陽鑑賞。逆光に浮かぶウルルも壮大です。
星空観測
星空観測も、素晴らしいものです。
なにしろ砂漠のど真ん中、辺りは一縷の光源も存在しません。夜空に輝く満天の星々に息をのみます。もちろん南十字星もよく見えます。
あとがき
オーストラリアは、20以上の世界遺産が登録されています。そのなか、ウルルは世界でも数少ない複合遺産。思い切ってひとり旅をして、ウルル登山に挑戦しておいて良かったと思い返しています。