
オーストラリアのウルルは、永遠に登山禁止となりました。
もう二度と叶わない、行っておいて良かった世界遺産です。
この記事は、危険な急斜面の1枚岩を登る、ウルル登山の旅行記です。
ウルル山頂の景色をご紹介します。
ウルル(エアーズロック)とは

一枚岩
世界最大の1枚岩は、同じオーストラリアにあるマウント・オーガスタで、ウルルの2.5倍の大きがあります。
サイズ
4億年前の地殻変動で、砂岩の地層が褶曲して向斜構造となり地上に突出して表れ、7000年前には現在の姿になったといわれます。
地上に見える岩は全体の5%に過ぎず、表面には地層が表れ、地表からほぼ垂直に無数の縦縞を形成しています。
7色変化
ウルルは、朝日や夕陽を浴びて7色に変化するといわれます。
特に夕陽で赤く染まるウルルは、感動的ですらあります。
ウルルの歴史

先住民アボリジニ
・ウルルは、先住民アボリジニの呼び名です。 ・エアーズロックは、イギリス探検家ウィリアムズ・ゴスに名付けられました。
オーストラリア先住民が住み着いたのは、5万年以上前といわれています。
精霊や水場の位置が描かれた壁画が残されており、ウルルは先住民の聖地とされます。
アボリジニ土地権利法
1976年、アボリジニ土地権利法が制定された際は、ウルルが対象から除外されていました。
オーストラリア政府は、1983年に法改正とウルルの所有権を伝統的所有者に返却することを宣言し、1985年にウルルの所有権を本来の所有者である先住民(アナング/Anangu)に返却しました。
同時に、2084年まで一帯の土地を環境エネルギー省にリースされることになり、無許可で立ち入った場合に罰金が科せられることになりました。
世界遺産登録
世界自然遺産
国立公園内にはウルル山(エアーズ・ロック)とカタ・ジュタ山(マウント・オルガ)の2つの山が横たわっています。
もとは巨大なひとつの岩山でしたが、雨や風により浸食され、悠久の時の流れを経て今の形になったといわれています。
世界文化遺産
世界複合遺産
複合遺産は「マチュピチュの歴史保護区(ペルー)」「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群(トルコ)」「メテオラ(ギリシャ)」など39件が該当しますが、世界遺産全体の3%しかありません。
ウルル登山
ウルル登山の概要
ウルルの山頂までは片道約1時間で行けますが、前半は最大斜度46度の鎖場です。
過去には、急斜面の滑落による死亡事故が30件以上発生しており、その中には日本人の観光客も含まれています。
入山には、気象条件によって左右され、太陽が高い晴天でも風が吹く場合は入山禁止となるなど、厳しく制限されていました。
観光の場合、入山できる確率は3分の1程度と聞かされました。
また、宗教的な理由から、立入禁止や写真撮影禁止の区域も存在しました。
入山禁止の天候条件
- 気温:最高気温が36度以上になると予想される場合は、朝8時に閉鎖
- 風:2500フィート(25ノット)以上の風が吹くと予報された場合
- 低気圧:ウルルから50キロ以内の北西または南西に強い低気圧が観測された場合
- 雨:今後3時間以内に20%以上の確率で降雨が予報された場合
- 雷:今後3時間以内に5%以上の確率で雷雲の発生が予報された場合
- 曇天:ウルルの山頂より低く雲が出ている場合
- 日没:日の出の1時間半以上前および日の入り後1時間半後

現地の看板です。
天候条件が羅列されています。


日本語で「登らないこと、これがあるべき姿です」とあります。
登山の様子
一枚岩の最大46度ある斜面を、鎖場を頼りに登山します。
私は、トレッキングシューズの準備を怠り、薄っぺらいスニーカーで登山したため、岩の表面がツルツルと滑ります。
また、左右の視界から、地表が見渡せるほどの谷間が迫ります。
高所恐怖症の私は、足がすくむ思いで鎖を手繰り寄せていました。

観光客を乗せたキャラバンが集まってきます。

一般人立ち入り禁止です。

岩場はツルツルで、予想以上によく滑ります。

写真で見る以上に急斜面です。

右を見ても崖、左を見ても崖。

下を覗くと地面まで滑落しそうです。

尾根を歩きます。

鎖場でない場所も油断できません。

山頂に羅針盤がありました。
ここは「地球のへそ」です。

360度、見渡す限りの赤土の砂漠!

下山も慎重に歩きます。

往復2時間の登山。
無事に登頂できて本当に良かった!
登山の永久禁止
2019年10月25日、観光客の登山が永久的に禁止されました。
そもそも先住民の間では、祭司以外はウルル登山が認められておらず、オーストラリア政府のウルル観光開発を快く思っていませんでした。
オーストラリア政府が、リース料とウルル=カタ・ジュタ国立公園入場料の一部を先住民に支払っていたため、観光収入が貴重な収入源である先住民にとって容認せざるを得なかった事情がありました。
一般観光客には残念ですが仕方がありませんね。

ウルル観光の楽しみ方
夕陽鑑賞と朝日鑑賞

ウルルの7色に変化する夕陽鑑賞や、朝日鑑賞をすることが最大の楽しみ。
世界中から集まった観光客が一同に介し、立食パーティが開催されます。
見渡す限りの砂漠のなかで、ウルルの存在感だけが際立ちます。

サンセット。

ウルルが刻一刻と色を変化させていきます。

夕陽鑑賞の様子。

翌日、朝日鑑賞の様子。
ウルルが逆光に浮かび上がります
星空観測
なにしろ砂漠のど真ん中ですから、一縷の光源も存在しません。
一切の光が遮断された満天の夜空に輝く星は、筆舌に尽くしがたく息をのむ光景が広がります。
マウナケア(ハワイ島頂上で日本のすばる望遠鏡があります)の夜景に比肩する美しさです。
当然、南十字星が良く見えます。

あとがき
オーストラリアには、現在20個の世界遺産がありますが、ウルルは世界でも数少ない複合遺産のひとつです。
永久に登頂できなくなったことは残念ですが、思い切って一人旅をし、ウルルに登頂しておいて良かったと、しみじみ思い返しています。
何事も後悔しないよう、思い立ったことを実践するよう心掛けたいと思います。


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