自己破産で失う権利とその末路

先日、参議院選挙の期日前投票に出向いた。

総務省によると、投票率は過去最高の58.51%、期日前は最多の2,618万人だったらしい。投票会場に多くの公務員が駆り出されてる状況を見ると、選挙には莫大な血税が注ぎ込まれていることを認識せざるを得ない。

私は政治に興味がない。政治家に任せて自分の暮らしが良くなるとは、1ミリも考えていない。

特に支持する政党もないが、最近選挙に出向くようになったのは、数少ない国民の権利を行使しないのは、勿体無いと考えるようになったからだ。

会社員から転身して個人事業を営む身になってから、「自己破産」を身近に考えるようになった。自身が金融で債権回収に携わり、多くの破産者を見てきたが、彼らは一定の権利が剥奪される。

この記事では、自己破産した人の権利と、その末路について紹介します。

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債権回収の現場

その前に少し、債権回収の現場を紹介します。

バブル崩壊後は、行き過ぎた取り立てにより、自殺、夜逃げが後を絶たず、給料や自動車など動産まで差し押さえることが日常的でした。ところが、現代の債権回収現場においては、消費者側が手厚く保護される世の中に様変わりしています。

公正証書や裁判で強制執行を勝ち得ても、取れる財産がなければ、金融機関側が泣き寝入りするようになったのです。督促できる時間帯や手紙の回数までも法律で厳しく定めらています。

それでは金融機関が次々に破綻しそうですが、実はそうでもありません。債権回収の目標金額がある一方で、債権償却の目標金額もあるのです。当期利益から法人税が徴収されるわけですが、債権を手放せば法人税を納める必要もありません。手順を踏んで債権を償却することも、企業の利益を生み出す方法のひとつです。

真面目に高い金利を支払う善良な消費者が、借金を踏み倒す悪質な消費者を助けているのが実情なのです。このブログで何度も伝えていますが、金利のある借金は今すぐに返済しましょう。

事故破産者の権利

自己破産は、法律上免責(借金の支払い義務の免除)」を受けることができ、生活の立て直しが可能になる制度です。一方で一定の社会的制裁や制限が生じます。

1. 信用情報(ブラックリスト)登録

  • 信用情報機関に事故情報として登録されます。金融機関により、おおむね5年~10年間はローンやクレジットカードの利用ができません。
  • 新たな借入はもちろん、分割払い(車やスマホなど)もできません。

2. 官報に名前が載る

  • 自己破産の開始決定・免責決定は、「官報」という政府の公的広報に掲載されます。
  • 一般人に馴染みは薄いですが、就職や縁談に影響することは否めません。

3. 一定の職業制限(資格制限)

破産手続中は、以下の職業に就けません。ただし、免責が確定すれば再び就業可能になります。

  • 弁護士・司法書士・税理士などの士業
  • 警備員
  • 保険外交員
  • 宅地建物取引士(宅建士)
  • 一部の公務員・企業役員

4. 財産の処分

  • 自己所有の不動産・高級品・自動車は、原則として処分されます。
  • ただし生活に必要な家財(冷蔵庫・洗濯機など)は差し押さえられません。

5. 保証人への影響

  • 自分が破産しても、連帯保証人がいればその人に全額の支払い義務が移ります。
  • 結果として、家族や知人との関係が悪化する可能性があります。

6. 住宅ローンやマイカーローンの喪失

  • 住宅ローンが残っている家は、競売や任意売却となります。
  • 車もローン返済中であれば、引き上げ対象です。

7. 社会的な偏見・心理的ダメージ

  • 法律的には再起のチャンスですが、「破産者=信用のない人」という偏見が残ります。
  • 特に地方・親族関係では、影響が大きいケースもあります。
  • パスポートの発行や更新に影響はありませんが、海外渡航で制限がかかるケースがあります。
権利の補足

自己破産しても選挙権(投票する権利)が剥奪されることはありません。日本の選挙権は次のように定められています。

  • 日本国民であること
  • 満18歳以上であること
  • 公民権の停止などに該当しないこと

自己破産は民事手続きであり、刑事罰ではありませんので、公民権(選挙権や被選挙権)が停止されることはありません。公民権が停止される場合は、次のうようなケースです。

  • 公職選挙法違反などの重大な犯罪で有罪となった場合
  • 執行猶予なしの禁錮刑などが確定した場合
権利・資格自己破産
選挙権(投票) 影響なし
被選挙権(立候補)影響なし
一部の職業資格制限される(破産手続中のみ)

自己破産者の末路

最後に、自己破産した人の末路について実例を紹介します。

■ 末路の具体例①:会社経営者 → 清掃員(50代男性)

背景:中小企業を経営していたが、リーマンショック後に取引先が倒産し連鎖倒産。2億円の負債を抱える。

結果:自己破産後、会社は整理され、資産はすべて処分。自宅も競売に。住民票も移し、実家近くで清掃業のアルバイトを始める。

その後:月収は15万円ほど。借金はゼロになったが、ローンやクレジットカードが一切使えない生活。10年経っても信用情報は回復しておらず、賃貸住宅の契約にも苦労。

■ 末路の具体例②:パチンコ依存症 → 生活保護(40代男性)

背景:サラリーマンだったが、ギャンブルにのめり込み、カードローンを10社から合計800万円の借金。

結果:返済不能になり、弁護士に相談して自己破産。

その後:うつ病を発症し、働けずに生活保護を申請。親族との関係も断絶。家賃3万円のアパートで生活。毎月の支給金でなんとか生き延びる。精神的にも孤独で、自立の見通しは立っていない。

■ 末路の具体例③:シングルマザー → 再起成功(30代女性)

背景:離婚後、子供2人を抱えてパートで生活。家賃や教育費が重なり、カードローンや消費者金融で500万円の借金。

結果:自己破産後、保証人がいなかったため周囲に迷惑をかけずに済んだ。保育士の資格を取り、正社員に。

その後:自己破産から7年後に信用情報が回復。再びクレジットカードが作れるようになり、中古住宅も購入。現在は子供も高校生となり、慎ましくも安定した生活。

あとがき

自己破産は、よく知らないと「人生の終わり」のように思いがちですが、実際は人生を再起させるための制度です。

悪意をもって自己破産ありきで借金を重ねる者は論外ですが、会社員を辞めて新しいことにチャレンジするための資本作りであれば、前向きに借金を検討してもよいのではないかと思っています。

私は総額1億円の借金をして会社員を辞めました。トラブルも多くて資産を残せそうにありませんが、なんとか破産せずに借金返済できそうです。

このブログでは、FIREを目指す中高年の会社員を応援しています。