富士山は、太古から信仰の対象として人々に崇められ、多くの芸術作品を生み出したことから、2013年に世界文化遺産に登録されました。
高さ3,776mの独立峰は、箱根や伊豆など絶景スポットが多いのですが、登山はまったくの別物。
・富士山登山のリタイア率25%。
・初心者のリタイア率50%。
この記事では、初心者が準備しておく知識・体力・道具について紹介します。
私達家族も初心者でしたから、それはもう本当に地獄でした。あとがきに、富士山登山の感想を述べています。
・富士山が好きな人
・富士山登山に興味がある人
・富士山登山にこれから挑戦する人
知識の準備
富士山登山に挑戦するのは、毎年20万人から30万人。
コロナ前、4人に1人が外国人であったことから、世界的に有名な山であることがわかります。
ただ、知識不足により軽装で挑戦した挙句、リタイアする人が後を絶ちません。
事前に情報を収集することが、何よりも欠かせません。
4つの登山口と登山ルート
山頂へ至る登山ルートは4つ。それぞれ起点となる登山口が異なります。
①吉田ルート(黄色)
- 標高差:約1405m
- コース距離:約13.8Km
- タイム:登り6時間25分・下り3時間50分
- 登山者が最も多く、初心者に安心なコース。
②須走ルート(赤色)
- 標高差:約1740m
- コース距離:約12.9Km
- タイム:登り7時間・下り3時間40分
- 樹林帯や砂走など、登山経験を要するコース。
③御殿場ルート(緑色)
- 標高差:約2260m
- コース距離:約17.4Km
- タイム:登り8時間15分・下り4時間30分
- 標高差が大きく距離が長いため、登山者が少なく健脚向きのコース。
④富士宮ルート(青色)
- 標高差:約1330m
- コース距離:約8.7Km
- タイム:登り5時間45分・下り3時間50分
- 吉田ルートに次いで登山者が多く、行程も最短で初心者に安心のコース。
登山規制
2024年から、山梨県の吉田ルートで通行規制が始まります。吉田ルートは、午後4時〜午前3時の入山禁止。上限人数は、4000人。通行料2000円+協力金1000円。詳細は、山梨県HPをご確認ください。
登山行程
登山行程は、体力と日数を考慮して「日帰り」と「山小屋1泊2日」から選択します。
夏山は、鮮やかな緑と高山植物が彩ります。熱中症対策として、急がずゆっくり歩き、こまめに水分を取りましょう。標高が上がると気温が下がりますので、防寒対策も必要になります。
①ご来光登山(山小屋利用1泊2日)
一般的な人気の登山です。
- 初日正午登山口5合目に到着
- 13:00食事を済ませて出発
- 16:00山小屋に到着
- 休憩4~5時間の休憩と仮眠
- 翌1:00山小屋を出発
- 翌5:00登頂・ご来光
- 翌正午5合目まで下山
②日帰り・ご来光登山(山小屋利用なし)
いわゆる弾丸登山です。
- 初日夜登山口5合目に到着
- 翌5:00登頂・ご来光
- 翌午前5合目まで下山
大勢の登山者が登っていますが、体力的にかなり厳しく、一気に頂上を目指すため高山病になるリスクも高まります。
初心者による日帰り登山・弾丸登山と呼ばれる0泊2日の登山は、高山病を発症して登頂を断念する人が増えています。
③ゆとり登山(山小屋利用1泊2日)
山小屋で宿泊し、山小屋の前でご来光を迎えてから頂上を目指します。頂上でご来光は拝めません。
- 初日正午登山口5合目に到着
- 13:00食事を済ませて出発
- 16:00山小屋に到着
- 宿泊宿泊
- 翌5:00山小屋でご来光
- 翌午前登頂
- 翌午後5合目まで下山
④日帰り・前夜泊登山(山小屋利用あり)
初日夕方に5合目に到着して山小屋に宿泊、7合目付近でご来光を迎え午前中に登頂します。頂上でのご来光は拝めません。
- 初日夕方登山口5合目に到着
- 初日夜7合目の山小屋に到着
- 宿泊宿泊
- 翌5:00山小屋でご来光
- 翌午前登頂
- 翌午後5合目まで下山
夕方には5合目に戻ってきますので、24時間の日帰り登山と同じです。
混雑しにくい時間帯を歩きますので、その分ゆとりがあります。
⑤頂上泊・ご来光登山(山小屋利用2泊3日)
頂上の山小屋に泊まり、ご来光を迎えます。
- 初日午前登山口5合目に到着
- 初日夕方頂上の山小屋に到着
- 宿泊宿泊
- 翌5:00ご来光
- 翌正午5合目まで下山
初日は朝から夕方まで時間をかけてゆっくり登ります。
富士山の近くに前泊する必要があるため、実質2泊3日の行程になるでしょう。
お鉢巡り
お鉢巡りをする場合は、下山の体力を温存し、ゆとりをもって時間調整しましょう。
山頂一周のお鉢巡りは、所要約90分。吉田ルート8合目や、御殿場ルート7合目を過ぎると、下山道に山小屋はありません。利用できる山小屋は、事前に確認しておきましょう。
高山病
高山病の 症状は、頭痛・疲労・吐き気・食欲不振・倦怠感など。重症になると、息切れ・錯乱・昏睡症状が現れます。原因は、高地での酸素欠乏・飲みすぎ・睡眠不足などです。
吉田ルート八合目にある富士山八合目救護所を訪れる患者は、3分の2が高山病。原因の半数が、弾丸登山によるものです。
ルールとマナー
トイレの廃棄物は、麓まで運搬して処理します。清掃員の人件費、建物のメンテナンス、燃料費など、維持管理に莫大な費用がかかっています。
持ち込んだゴミは勿論のこと、配給された弁当・お茶もすべて持ち帰りましょう。
体力の準備
①登山の体力づくり
富士山の登山者には、初心者が多いのが特徴です。標高3,776mの登山は、決して易しいものではありません。少なくとも20Km以上の登山と下山が必要です。日頃から鍛錬して準備しておきましょう。
②登山の事故防止
- 下山時に膝や関節を傷めないように、毎日のスクワットや筋力トレーニングがおすすめ。
- 心肺機能を高めるため、ウォーキングなど有酸素運動も有効です。
- 背筋を伸ばして歩く姿勢を心掛けましょう。
- 筋肉の痙攣防止のため、マッサージやストレッチで血の流れを良くましょう。
- 寝不足や体調不良の場合は、登山を延期しましょう。
③予行演習
近隣の山で、登山やハイキングに慣れておきましょう。本番直前は、重いザックを背負い、少し長い距離を歩いてみましょう。事前にギアや荷物の中身をチェックしておくと安心です。
道具の準備
富士山登山に準備したい道具と持ち物です。
①登山道具
スニーカーでは登れません。岩場は、雨で濡れると滑落の恐れがあります。夜道のヘッドランプは必須です。
- トレッキングシューズ(ソールのしっかりした登山用シューズ)
- トレッキングポール(杖は2本あった方が楽です。最低でも1本は必要)
- ザック(バックパック 、日程により20~35ℓモデル)
- ザックカバー(雨でも濡れない)
- ヘッドランプ(両手がふさがるので夜間に必須)
- サングラス(紫外線対策)
②ウェア
天候は、変りやすいものです。気温も標高100m毎に0.6℃下がりますので、山頂は地表より22℃低くなります。レイヤリングは、3つの層に分けて調整できる準備をしましょう。
- アウターレイヤー(防寒、雨風に強く、通気性に優れた素材のジャケット・パンツ)
- ミドルレイヤー(汗を透過させ、保温性を調整できる中間着)
- ベースレイヤー(速乾性で、汗冷えを防ぐアンダーウェアやTシャツ)
- レギンス
- スパッツ・ゲーター(砂除けにあると便利)
- 帽子
- 手袋
- 防寒ウェア(ネックウォーマーなど)
- 各種サポーター
③ザックの持ち物
晴れ予報でもレインウェアは必須。山の天候は変わりやすく、寒い時に防寒具として役立ちます。頂上に近付くにつれて食欲は無くなりますが、水分と栄養補給は必要です。
- レインウェア(防水素材GORE-TEXなど)
- 飲料水(2~3ℓの水分補給が必要です。ゴミは持ち帰ります)
- お弁当(高山で食欲が出ませんが、エネルギー補給は必要)
- 携行食(栄養補助食、ドライフルーツ、チョコなど)
- メディカル用品
- 日焼け止め
- 手拭い・タオル
- ティッシュペーパー
- ゴミ袋
- 小銭(トイレ利用に必要)
- 簡易シート(座る時にあると便利)
- 歯磨きガム(水は使えません)
- 下山後の着替え
- 携帯酸素ボンベ(自信がない人向け。一瞬だけ楽になります)
- カイロ(山頂は極寒です)
- スマホ
- ガイドブック
あとがき
私達家族は、吉田ルートから登山し、須走ルートで下山しました。登山口では、元気だった私達ですが…
山頂が近付くと、高山病手前の頭痛と寒さと吐き気で声が出ません。山小屋で家族4人分の弁当を配給されたのですが、誰も喉を通りません。ゴミ箱が無いので、やむなく家族全員の弁当が私のザックに…
なんとか無事全員で登頂できましたが、顔が苦痛で歪んでいます。ツアー参加者から何人も脱落者が出ましたので、リタイア率50%も納得です。それでも、登頂できた満足感は、言葉に表せません。
夜明け前の空にご来光!辛かったですが、来て良かったと思う瞬間です。
ちなみに、私は膝の関節を痛めてしまい、地獄の下山となりました。しかし、下山後のお風呂は、冷えて疲れた体を芯から温めてくれて、まるで楽園のよう。
まだ、富士山登山の経験がない方は、いちど挑戦してみては如何でしょうか?
私は、もう2度と登りませんが…