私は、金融に勤めながら、不動産事業で早期退職した。
会社を辞めるとき、同僚から浴びた言葉が忘れられない。
「知識がある人は、いいよな…」
こういう意味だ。
「俺には不動産の知識がないから、早期退職なんてできないな…」
何をか言わんやである。
知識がなくても何でもできる
最初から知識がある人なんて、いるわけない。
右も左も分からず、メンターもいない。
10年前は、YouTubeも見ていなかった。
暑い夏も寒い冬も、ひたすら古い戸建を再生する。
会社から帰宅し、夜中にペンキを塗り、クロスを貼る。
休日は、不動産会社に飛び込み、客付けしてもらえるよう頭を下げる。
ただ、自分を信じて進むだけだ。
そのモチベーションを維持した方法は、退職する勇気で紹介した。
お金がなくても何でもできる
本題は、ここからだ。
さすがにお金がなければ、できることにも限りがある…と、最近まで思っていた。
しかし、その甘い考えを根底から覆してくれた本がある。
「無一文人力世界一周の旅」
久々に、高揚し感銘を受けた。
物語のさわりはこうだ。
手持ちは160円。ヒッチハイクし、貨物船に乗せてもらい大陸に渡る。
ママチャリを手に入れ、人の慈愛と醜悪に触れながら、野宿して歩みを進める。
盗まれ、殴られ、犬に噛まれ、闇夜にまぎれて検問所を通り抜けた。
そして、ようやく海抜0mのインド最南端に到達。
その時の全財産、わずかなルピーを物乞いする子供にあげてしまう。
次の目標に選んだのは、海抜0mから人力でエベレスト8848mの登頂を果たすこと。
あらためて、無一文からの挑戦である。
エベレストの挑戦は、本書でご覧頂きたい。
著者は、無人の荒野で水が尽き、生活に余裕がない民に食料を分けてもらったことが印象深かったと締めくくっている。
本当にそんなことが可能なのだろうか。
数々のピンチを乗り越え、尋常ではない旅の展開に最後まで目が離せなかった。
心に残った言葉がある。
旅の終点は、新たな旅の始点である。
あとがき
著者は、イギリスのゴット・タレントに出演して一躍有名になった。
お金がないから、何もできないという人は多い。
私もそのひとりだった。
この本を読んでみると、きっと衝撃を受けるはずだ。
人の優しさに触れたり、騙されて憤慨したり、決して真似のできない経験を擬似体験できることだろう。